暦の上では二月初旬の立春から「春」になりますが、気象庁の定義では三月
から五月までを「春」と呼びます。明日からは弥生三月、いよいよ春の始まり
です。

 ところで、今度の月曜日は雛祭りです。京都御所はむかし「内裏(だいり)」
とも呼ばれ、「内裏様」というのは宮中の貴人を指しました。「右近の橘・左
近の桜」が雛壇に飾られるのも御所の正殿である紫宸殿(ししいでん)を模して
いるからです。

 神話の頃、コノハナサクヤヒメが富士の頂から種を蒔いて咲いたと言われる
のが桜で、古くから日本人に親しまれてきました。橘は、常緑の葉が永遠を象
徴する縁起の良い木です。

 また、雛壇には桃の花も飾られます。上巳(旧暦三月最初の巳の日)のころに
咲く桃は安産や強い生命力の象徴とされ、中国ではその実を不老長寿の仙薬と
する伝説もあり、さらに魔を祓う力もあるとされていました。ちなみに昔々の
桃太郎の話は老夫婦が桃を食べて若返り、子供を授かるというお話でした。

 なお、お雛様を飾る際の男雛と女雛の位置についてですが、古式では「天子
南面」と言われますように、天子は南に向いて座り、日の出の方角(東、天子
の左手側、向かって右)が上座(左上座)で、日没の方向(西、天子の右手側、
向かって左)が下座となるため、男雛の右手側に女雛を置くのが日本古来の伝
統です。

 しかし、欧米流が範となっている国際儀礼(プロトコール)では原則として
右上位(向かって左側が上位)であるため、現在のような向かって左側に男雛
を置くスタイルが広がりました。ちなみに、現在の皇室も国際儀礼に倣い、一
般参賀などでは天皇陛下が向かって左側、皇后陛下が向かって右側にお立ちに
なります。

 結論としましては、古式に則り男雛を向かって右に置くのか、現代風に左側
に置くのかは好みでどちらでも構わないそうです。