この程、政府は南海トラフ地震(東海、東南海、南海3連動地震)の被害想
定(推計)を改訂しました。
これまでの被害想定は過去数百年間に発生した地震を基に推計されてきまし
たが、先の東日本大震災はそれらの想定をはるかに上回る規模で起きたことか
ら、千年に1回しか起きないような巨大地震まで想定し推計し直したのが今回
の数値です。
ちなみに2003年時の推計では、悪条件が重なった場合での最大死者数は
2万4700人、建物全壊は94万0200棟と想定されていましたが、今回
の推計では最大死者数32万3000人(前回推計比約13倍)、建物全壊は
238万6000棟(同約2.5倍)となっています。津波は場所によっては
最短2分で到達。高知県黒潮町を襲う津波の高さは、最大で34メートルに達
するだろうと想定されています。
ただただ茫然、愕然とする衝撃的なデータです。しかしながら、内閣府の有
識者検討会は上記のような被害想定を行う一方で、減災に努め、1秒でも早く
安全なところへ逃げれば、最悪のケースとして見積もった死者数32万人とい
う数値は5分の1以下にまで減らすことが可能だとしています。
全死者数の7割を占める津波による死者数は、地震発生から10分以内に全
員が避難を開始し、既存のビルを津波避難用に活用できれば、被害は想定の2
割程度(8割減)にとどめることができると推計。また、建物の倒壊による被
害を防ぐには古い住宅の補強や建て替えなどの「耐震化」が有効で、79%の
耐震化率(2008年時点、全国)を今後引上げれば、建物倒壊は現在の想定
よりもかなり軽減でき、結果、建物倒壊による死者数も大幅に減らすことが可
能だとしています。
尚、今回公表された被害想定の基となる地震は、南海トラフに震源域が連な
る東海(30年以内の発生確率88%)、東南海(同70%程度)、南海(同
60%程度)の各地震とは切迫度は別個のもので、発生確率は極めて低くても
起りうる「最大級の巨大地震」を想定したものです。